レンズダンパー推進協議会(内、技術委員会の6社(※1))は、レンズダンパーの特徴を活かしたRC造間柱への取付け構法を新たに考案し、特許を出願しました。また、考案した取付け構法は実大試験体を用いて、構造性能確認試験を行い、制震効果を実証しました。
なお、本試験は、日本大学の北嶋圭二教授のご指導のもと行っています。

開発の背景

近年、地震荷重下における建物の応答低減機構として、様々なエネルギー吸収デバイスが開発されています。その中でも間柱(まばしら)型ダンパーは、開口部を塞ぐことなく設置できるのが特徴で、様々な建物に採用されています。
本構法で用いるレンズダンパーは、低降伏点鋼を用いた履歴型ダンパーで、中央部の両面を凹レンズ状に削り取られた形状にしております。そのため、ひずみがパネル全体に平均化され、安定した履歴を得ることができ、地震の揺れを再現した繰返しにも耐えられます。また、フランジがないため、一枚板の薄い形状であることも特徴です。(※2)
レンズダンパーの基本的な構造性能は第三者機関において確認(※3)されています。また、レンズダンパーを取付けた鉄骨造間柱の構造性能は、各種試験により確認し、実物件への採用実績もあります。
レンズダンパーの適用拡大のため、RC造建物への適用について検討を行ってきました。RC造間柱は、鉄骨造間柱と異なりレンズダンパーを直接ボルトによる取付けが出来ません。そこで、本協議会は、レンズダンパーの特徴を活かした取付け構法を考案しました。

レンズダンパー外観
レンズダンパー外観

鉄骨造建物への適用例
鉄骨造建物への適用例

考案した取付け構法

レンズダンパーのRC造間柱への取付け構法として、次の3種類を考案しました。

  1. RC造間柱のひび割れを抑制するため、PC鋼棒による軸力導入を採用し、取付ける「PC鋼棒型」
  2. 免震部材の取付け部などに採用されるアンカーボルトを用いて、取付ける「アンカーボルト型」
  3. 上下RC造間柱の隙間を極力無くすため、レンズダンパーの薄い形状を生かし、RC造間柱中央部に嵌込む「嵌込み型」

なお、上記の取付け構法については、2017年8月1日に特許を出願しました。

試験概要と結果

上記3種類の取付け構法の実大試験体を作成し、構造性能確認試験を行いました。
制震効果の確認のため、それぞれの試験体において、RC造間柱の断面寸法、コンクリート基準強度、レンズダンパーの材質を共通事項としました。試験は、2016年6月中旬から下旬にかけて、日本大学理工学部大型構造物試験センターにて実施しました。
試験の検証を行った結果、3体の試験体はともに、レンズダンパーの最大水平荷重に達するまで取付け部での損傷は見られず、レンズダンパーの性能を十分発揮しました。

考案した取付け構法による試験体

PC鋼棒型(左)、アンカーボルト型(中)、嵌込み型(右)
PC鋼棒型(左)、アンカーボルト型(中)、嵌込み型(右)

RC造間柱試験状況(PC鋼棒型)
RC造間柱試験状況(PC鋼棒型)

※1 当社、日本鋳造株式会社(事務局)、飛島建設株式会社、鉄建建設株式会社、西松建設株式会社、他1社

※2 レンズ型せん断パネルダンパーは建築用だけでなく橋梁の支承部に設置し地震時の変形を押さえる減衰機構としての実績もあります。

※3 「レンズ型せん断パネルダンパー設計法」として、2012年6月に一般財団法人日本建築センター
鋼構造評定委員会で評定を取得し、2017年6月に更新評定を取得しています。

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