山岳トンネル坑内で自律飛行ドローンによる点検を実施~日常点検などの現場管理の省力化を実現~
青木あすなろ建設株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:辻󠄀井靖)と株式会社Spiral(本社:東京都葛飾区、代表取締役:石川知寛、以下Spiral)とクオリカ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:辻本誠)は、非GNSS環境下かつ障害物の多い山岳トンネル坑内で自律飛行ドローンを使用した坑内機械設備の無人点検本格運用を実施し、日常点検業務の省力化を実現しました。
<実証実験と実用化の背景>
山岳トンネル坑内は暗所かつ、セントル(※1)などの機械設備が多く、重機も多く稼働しており、巡視可能時間も限られるため、効果的な点検技術が求められています。そこで、自律飛行ドローンにより点検作業を行うことで、これらの課題を克服し、日常の点検作業の省力化、生産性の向上と安全性を確保するため、実証実験・本格運用を実施しました。
※1セントル:トンネル壁面部分のコンクリートを打設するための移動式型枠
<自律飛行の概要>
自律飛行ドローンによる点検には、Spiralの特許技術である非SLAM型(※2)屋内自律飛行システム「MarkFlexAir(マークフレックスエアー)」(※3)を使用しました。本システムは、遠隔操作で充電ポートから離陸し、飛行指示情報が入ったマーカーをドローンに搭載されたカメラが読み取ることで、自律飛行が可能になります。
※2非GNSS環境下でドローンの自己位置を把握する方法としてSLAM型(特徴点を認識することで自己位置を把握する)と非SLAM型がある。山岳トンネル坑内のような特徴点の少ない場所では、SLAM型は精度を確保することが難しく、かつ機体サイズが大きくなってしまうことから非SLAM型ドローンを採用した。
※3 MarkFlexはSpiralの商標
<セントルを避けて飛行するための実証実験>
2021年11月に近畿地方整備局発注の大野油坂道路大谷トンネル箱ケ瀬工区工事(以下【仮称】大谷トンネル)では、セントルを通過する飛行経路で実証実験を行いました。セントルを避けて飛行するためにセントルの入り口や出口など飛行経路が変化する地点にマーカーを設置することで、セントル内部を通過することが可能になりました。
2021年12月、2022年3月に国土交通省国土技術政策総合研究所(以下国総研)実大トンネルにて実証実験を重ねて自律飛行ドローンの飛行精度を高め、非GNSS環境下でも安定した飛行が可能であることを確認しました。
<機械設備の無人坑内点検本格運用>
2022年10月より、【仮称】大谷トンネルにて本格運用として無人坑内点検を実施しました。機械設備の定期巡回点検は坑内に現場職員が立ち入り、点検箇所を目視確認していましたが、事務所等から現場までの移動や坑内での歩行による点検など多くの時間を要していました。今回の無人坑内点検では、充電ポートを始点と終点の2ヶ所に設置し、事務所等からPC操作で離陸させ、全長約970mを自動巡回させました。ドローンが撮影した映像はリアルタイムで遠隔地のPC上で確認できるため、事務所等から坑内の点検が可能になり、省力化を実現しました。
※4コントラファン:トンネル坑内の換気設備
※5排水ポンプ:湧水を排出するポンプ
【今後の展開】
今後は、ドローン機体にガス検知器を搭載し可燃性ガス等の検知や、災害時・停電時の暗闇での点検などさらなる展開を検討しています。非GNSS環境下を含む多くの現場において、調査・点検作業の自動化を実現し、省人化、生産性向上および安全性向上を目指します。
以上
【本件に関するお問い合せ先】
建設技術本部 土木エンジニアリング部
Tel:03-5439-8513